平成10年(2007年)10月に雇用対策法が改正されるまでは、求人時に「年齢制限」をすることが可能でした。「30歳まで」や「25歳以上」などの表記ですね。これは求職者にとって、職業選択の機会を多くすることを目的にしていたと思うのですが、施行から10年経った今、就転職の現場ではうまく運用されているのか!感じたままを綴っていきたいと思います。
施行当時は、求人企業のご担当のみなさんは大変混乱されていました。「なぜ設定できないんだ」「年齢の高い人の応募があっても困るんだ」「お断りの作業が増えるんじゃないのか」と、ごもっともなご意見を連日いただいたものです。ただこればかりは、一介の求人広告制作者に変えられるわけもなく、しぶしぶ了承していただいたのも懐かしい話です。では実際の応募状況に変化は起きたのでしょうか?当時の採用環境は、今のような売り手市場ではなく、求職者にとってはとても厳しかったと記憶しています。そのため、求人募集の広告を出すと多くの応募がありました。それにプラスしての法改正だったため、欲しい年齢層以外の応募者も殺到。採用担当のみなさんは、「不採用通知」送付に多くの時間を費やされていました。
一方で、こんな声をよく耳にしました。「仕事を探している人もエントリーに多くの時間を費やしてしまい、自分がどこに応募したのかもわからなくなっているのでは?」「いくらネットになったと言っても履歴書を求められれば、何10枚と書かなきゃいけないじゃないか」と。事実、弊社で募集をした時も志望動機の欄に「これ、うちじゃへの志望動機じゃないような?」という記述を何度も見たことがあります。
では、制作者たちは企業の要望にどう応えているかというと、「明らかに若い人たちだけの写真を多用したり」「20代が活躍している事実」などを前面に出すといった小手先の工夫くらいしか選択できていません。(だからこそ、本当に欲しい年代の社員の方の、事実に基づいたエピソードが重要になるのです)
実は、年齢制限は一切してはいけないかというと、そうではありません。
- 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 労働基準法等、法令の規定により年齢制限が設けられている場合
- 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
- 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合
- 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する(国の)施策の対象となる者に限定して募集・採用する場合
引用:労働政策研究・研修機構
上記に当てはまるケースの場合に限り、年齢制限が可能になっています。中でも一般企業で多く活用されているのが「3」になります。ただこちらで募集できるのは、真っ白な未経験者のみ。そのため、職務経歴書の提出はもちろん、職歴を問うこともNG。行政機関の通常採用をイメージしていただければわかりやすいと思います。※行政は、新卒扱いの採用となるため生年月日で制限されています。
ここからは、私の考えなのですが、多くの企業では採用にあたって年齢層をある程度限られています。そのため、応募があったとしてもほぼお断りされているのが実情です。であれば、「年齢制限」は復活させるべきだと思うのです。ただ、それでも自信のある人はそれなりのセルフプレゼンの準備をして応募すればいいだけだと思うです。
現在のルールだと若年僧だけでなく、仮に40〜50代の人が欲しくても明確にわかりやすく表現できません。先ほどの小手先の工夫でいうと「40〜50代が活躍中」となってしまうわけです。
また、応募されるみなさんも求人広告に書かれている内容をきちんと読み込んでほしいとも思います、「この仕事(募集)は、自分に語りかけているのか?」。給与や休みだけの条件で判断するのではなく、募集の背景やどんな人たちが活躍しているのかなどにも着目してください。
採用環境が売り手市場の今だからこそ、あるべき状態とはどういうものなのか?考えても良いと思います。